久保田一竹「辻が花」に思いを寄せて

 私が「一竹辻が花」を初めて拝見したのは今から8年前、熊谷・八木橋デパートで開催
された「自然への賞賛展」でした。会場で目にした「辻が花の着物」は大きなキャンパス
に描かれた四季を彩る富士山の絵のように素晴らしく、その華麗な美しさにただ心奪わ
れ絶賛するのみでした。 開催中の会場に一竹さんがお見えになったとき、「辻が花」の
思いを私たちに話してくださいました。一竹さんは戦争を体験し、「召集、敗戦そして、ソ
連への抑留生活を経験するなかで、ハンカチ一枚を身から離すことなく、そのハンカチに
「辻が花」への思いをこめて「絞りをしては、解し」を来る日もくる日も繰り返し、その一念に
ハンカチの形はなくなりボロボロとなって、そして復員・・・」の話を聞き、胸がつまり目頭が
熱くなったことを覚えています。
そして、「辻が花の着物」に取りつかれた私は開催期間中、毎日のように足を運び「辻が
花染め」 の色艶を目に焼き付けていました、過ぎ去りし懐かしい思い出です。
先日、ある雑誌に懐かしい先生のお名前を拝見し、すぐにインターネットで検索しました。
 そして、久保田一竹さんの「経歴、業績、一竹さんのコメント、久保田一竹美術館(河口
湖)のイベント、海外での個展、日本巡回展」等をネット上で拝見し、更なるご活躍にマウ
スを持つ手も震え心から感動いたしました。
 室町時代(700~800年前) にあった「辻が花染め」に心惹かれ、生涯の研究テーマと
して努力を積み重ねて独自の「一竹辻が花」を完成させたその「生き方、意志の強さ、情
熱」はまさに芸術家としての鑑であり、私のような凡人には到底おしはかれない奥深い一
生涯であったと思います。
 なお、紅葉の里でくりひろげるひとときの夢物語「一竹さん自らの作、演出、衣裳の薪
能」は幻想的で豪華絢爛、さぞかし素晴らしいショータイムといえるでしょう。ぜひ一度鑑
賞したいと思っております。あの時目にした素晴らしい「一竹辻が花」を身近に感じたいた
め、ここに一冊のファイルとしてまとめてみました。

                                            2005.7.10
  


                        インターネットで見た一竹の着物